「従業員満足度」と耳にする機会が増えたものの、なぜ重要なのか、どうすれば向上するのか疑問に思う人も多いでしょう。
従業員満足度は、企業の成長に影響を与えかねない重要な指標です。従業員が職場に満足していると、モチベーションが向上し、生産性や企業全体の業績にも好影響を与えます。
本記事では、従業員満足度を調査する手順や高めるメリットや対策などを解説します。できるところから取り入れて、従業員満足度の向上にお役立てください。
従業員満足度（ES）とは
従業員満足度（Employee Satisfaction：ES）とは、従業員が職場に対してどれほど満足しているかを表す指標を指します。端的にいえば居心地の良さのことです。
従業員満足度の指標は、業務の内容や労働環境、職場の人間関係、福利厚生などがあり、実に多角的な要素から構成されています。
従業員満足度が高い企業では、従業員のモチベーションも高まり、長く働き続ける傾向があります。一方、従業員満足度が低ければ、従業員のモチベーションも下がり、離職率も上昇しかねません。このように、組織全体の成功のために、従業員満足度は決して軽視できないのです。
従業員満足度が注目される背景
近年、従業員満足度が注目されるようになった背景には、人材の流動性の高さや労働人口の減少が考えられています。
従来、給与や昇進が従業員にとって大きなモチベーションの源でしたが、現代はそれだけでは満足できないケースも多々あります。転職の一般化や副業解禁により人材も流動的になり、働きやすさやプライベートを重視する人が増えているのです。
さらに、少子高齢化による労働人口減少も大きな要因でしょう。企業側は優秀な人材を組織内に定着させたいため、従業員満足度の向上が不可欠と注目されています。
従業員満足度と従業員エンゲージメントとの違い
従業員満足度と従業員エンゲージメントはしばしば混同されがちですが、異なる概念です。
従業員満足度は、主に職場環境や待遇に対する従業員の満足度を指します。一方、従業員エンゲージメントは、従業員が企業の目標やビジョンにどれだけ共感し、自発的に貢献しようとする意欲を示します。そのため、従業員が満足しているだけでは、エンゲージメントが高いとは限りません。例えば、職場環境に満足していても、企業のビジョンに共感できない場合、エンゲージメントが低い可能性があります。両者をバランスよく向上させることが、企業の成功につながる重要なポイントです。
従業員エンゲージメントについては、こちらの記事で解説しています。
従業員満足度を高めるメリット
従業員満足度を高めることは、企業に多くの利益をもたらします。職場に満足している従業員は、仕事に対して意欲的になり、組織全体の活気が増すものです。ここからは、従業員満足度を向上させる具体的なメリットについて解説します。
人材の流出を防ぎ定着させる
従業員満足度が高い企業は、従業員の転職を防ぎ、離職率を低下させます。
従業員が会社に対して満足しているため、従業員は長期的に働き続ける意欲を持ち、人材の流出を防げるのです。人材の確保ができれば、結果として採用コストもカットできます。
また、従業員満足度が高いゆえに、従業員が人材を紹介するリファラル採用も増える可能性があります。
このように、従業員満足度が向上すると、優秀な人材を引き留め、長期的に企業を支えられるのです。
生産性や業績が向上する
従業員が職場に満足していると、仕事への意欲が高まり、生産性が向上します。職場環境や人間関係も良い職場では、従業員が自主的に課題に取り組み、より効率的に仕事を進めるものです。
さらに、職場のモチベーションが高まることで、チーム全体のパフォーマンスも向上し、結果として企業の業績が向上します。従業員満足度を高めることで、個々の従業員の力が発揮され、企業全体の競争力も高まるでしょう。
顧客満足度も向上する
従業員満足度が高い企業では、顧客満足度も向上します。
従業員がより良い製品やサービスを生み出そうとしたり、顧客に対する対応が良くなったりするためです。顧客満足度が高まると、リピーターや口コミでの新規顧客獲得が増加し、企業の成長にもつながるでしょう。
従業員満足度の向上が、顧客へのサービス向上につながり、長期的なビジネスの成功に貢献するのです。
従業員満足度を調べる方法・手順
従業員満足度を把握するためには調査が必要です。正確なデータを集めるためには、以下の手順で調査しましょう。
- 従業員満足度を調べる目的を明確にする
- 指標をもとに質問する項目を検討する
- 従業員に対して調査を行う
- 集計と分析をする
- 改善に活かす
以下で順を追って解説します。
1.従業員満足度を調べる目的を明確にする
従業員満足度を調べる際、まず最初に目的を明確にすることが重要です。何のために調査するのか、何を解決したいのかをはっきりさせることで、効率的に質問項目の設定や分析を行えます。例えば、以下のような目的が考えられます。
- 離職率を下げたい
- 職場環境を改善したい
- 従業員のモチベーションを向上させたい
目的が明確であれば、それに基づいた適切な調査設計が可能となるため、具体的な課題を設定しましょう。
2.指標をもとに質問する項目を検討する
次に、従業員満足度を測定するための指標を選定し、その指標に基づいた質問項目を設定します。
調査の目的にもよりますが、従業員の仕事内容や職場環境、福利厚生、人間関係、キャリアアップの機会など、さまざまな要素を網羅すると良いでしょう。
また、質問は具体的かつ簡潔に設定してください。回答方式は選択式や自由記載などありますが、従業員が答えやすいようにしましょう。選択式であれば、回答の傾向を把握するため、4〜6段階評価の回答方式がおすすめです。
質問内容や回答方式を十分に検討して、従業員の本音を引き出しましょう。
3.従業員に対して調査を行う
質問項目が決まったら、実際に従業員に対して調査をします。
この段階では、従業員が率直に回答できる環境を整えることが大切です。匿名での回答が可能な方法や、回答を強制されない雰囲気が求められます。オンラインアンケートや紙ベースのアンケートなど、従業員にとって回答しやすい方法を選びましょう。調査の期間や回答期限も事前に明確に伝え、従業員の理解を得られるように努めてください。
4.集計と分析をする
調査結果が集まったら、次はそのデータを集計し分析します。ここでは、定量的なデータだけでなく、自由記述のような定性的なデータも丁寧に分析することが大切です。
また、分析方法も多数あります。全体の傾向を知るための単純集計をはじめ、属性別の傾向を知るクロス集計、項目間の関連性をみる相関分析などあるため、目的に応じて取り入れましょう。
5.改善に活かす
調査結果をレポートにまとめたら、具体的な改善策を立案します。特に不満が集まった項目や、従業員が高く評価した点に注目し、優先順位を付けて取り組みしょう。
例えば、職場環境の改善や新しい福利厚生の導入、コミュニケーション手段の見直しなど、具体的な行動が必要です。また、調査後には従業員にフィードバックをし、改善に向けて取り組んでいる旨を周知すると、従業員の理解が深まるでしょう。
従業員満足度を高める方法
従業員満足度を調査し、高めるためには具体的な取り組みが欠かせません。そこで、企業の事例を交えながら従業員満足度を高める方法を紹介します。
企業理念を浸透させる
従業員満足度を高めるためには、企業理念の浸透は欠かせません。
従業員が企業のビジョンや価値観に共感し、その一員として働くことに意義を感じるようになると、組織の一体感が生まれるほか、仕事に対するモチベーションも高まります。
企業理念を伝えるためには、定期的に理念を共有する機会を設けるだけでなく、全体会議や社内ツールなどで現場の従業員に伝わるような工夫が必要です。
例えば、スターバックスでは新人研修の際に、具体的な業務だけでなく自社の理念の浸透にも時間を割いています。
このように、研修やツールを通して、現場の従業員に浸透できるよう試みると良いでしょう。
出典：スターバックス｜お互いに刺激しあい成長できる環境。スターバックスで働く親子の物語
職場環境を改善する
従業員満足度を高めるためには、職場環境の改善も欠かせません。快適で働きやすい環境は、従業員のストレスを軽減し、業務に集中しやすくします。
物理的な作業環境はもちろん、評価制度の見直しや業務内容を適性にして業務効率化を図ることも大切です。ほかにも、従業員の希望をヒアリングし配置や異動を行うのも良いでしょう。
企業の事例としては、リラックスできるスペース作りによるオフィス環境の快適化、RPAの導入による自動化などの取り組みが多くみられています。
従業員の声を反映させた快適に働ける職場作りを心がけましょう。
福利厚生を充実させる
充実した福利厚生は、従業員満足度を向上させる大きな要因となります。
福利厚生といってもさまざまであり、金銭的なものからヘルスケアに関するもの、特別休暇の付与、社内のレクリエーション、その他さまざまな補助など実に多様です。
福利厚生の充実によって、従業員がより健康的に、仕事とプライベートを両立しながら働けます。これにより、従業員は会社に対する安心感を持ち、長期的に働き続ける意欲が高まるでしょう。
まとめ｜従業員満足度は取り組みによって改善できる
従業員満足度は従業員が企業にどの程度満足しているかを示す指標ではありますが、企業側にとって軽視できない指標です。
まずは調査して自社の従業員満足度がどういった状態なのか把握しましょう。分析結果に応じて、企業理念の浸透や職場環境の改善、福利厚生の充実などを取り入れて改善を目指しましょう。
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