仕事に対するやりがいや満足感を感じられていますか?現代のビジネス環境では、働きがいを感じることが個人の成長や企業の成功に直結すると言われています。
ですが、実際には「どうすれば働きがいを高められるのか?」と悩んでいる方も多いはずです。本記事では、働きがいを向上させるための具体的な施策や成功事例を紹介します。自分自身や組織にどのような変化が必要か、ぜひ考えてみてください。
働きがいとは?
働きがいとは、与えられた仕事に誇りや価値を感じ、自発的に頑張ろうとする労働意欲を意味する言葉です。働きがいを感じることで、個人の成長が促進され、職場全体の生産性向上にも役立ちます。
ここでは、働きがいの具体例や、働きやすさややりがいとの違いについて詳しく説明します。
働きがいの具体例
働きがいを感じる具体的な状況として、現在の仕事が楽しく、生きがいを感じることが挙げられます。これは従業員のエンゲージメントを高める重要な要素です。
世界的に有名な「Great Place to Work®(GPTW)」が提唱するように、働きがいのある職場とは、やりがいと働きやすさの両方を兼ね備えた組織です。このような職場では、従業員が自己実現を達成しやすく、結果的に企業の成長にも寄与します。
参照元:Great Place To Work® Institute Japan
仕事に楽しさや生きがいを感じることで、従業員は自発的に努力し、職場でのパフォーマンスが向上します。このような働きがいを持つ従業員は、会社に対する忠誠心も高く、長期的に勤める意欲が増します。
働きやすさとの違い
働きがいと働きやすさは密接に関連していますが、異なる概念です。働きがいは仕事への満足感や誇りに関連し、働きやすさは労働環境や福利厚生に関連します。
働きがいは従業員の内面的な満足度に依存し、仕事に誇りを持つことで生まれます。一方で、働きやすさは外的要因、つまり職場の物理的な環境や制度によって影響されます。
例えば、ある企業で働きやすい環境が整備されていても、仕事に対する誇りや価値を感じられない場合、働きがいを感じることは難しいでしょう。逆に、厳しい環境下でも、仕事に意義を見出せる場合、働きがいを感じることができます。
従業員の満足度を高めるためには、働きがいと働きやすさの両方に配慮する必要があります。
やりがいとの違い
やりがいは、仕事に対する意欲や達成感を感じる要素です。従業員がプロジェクトを成功させた際の達成感や上司からの感謝の言葉などが、やりがいを生む要因となります。やりがいは主に仕事の成果や評価に影響されます。
一方で、働きがいは、職場全体の環境や条件に関連します。組織の文化、同僚との協力、報酬、ワークライフバランスなどが働きがいに影響を与えます。
やりがいを感じることは、従業員のモチベーションを向上させ、前向きな姿勢を促します。そして、働きがいが高まることで、従業員のエンゲージメントも向上します。したがって、両者は相互に影響し合い、組織全体の成功につながります。
働きがいにおけるエンゲージメントとは
働きがいに関係する概念として、近年注目が増しているエンゲージメント。エンゲージメントとは、従業員が仕事に対して感じる誇りややりがい、そして企業への貢献意欲を指します。
厚生労働省もエンゲージメントの重要性を認識しており、企業における組織力向上の一環として、エンゲージメントを高める施策が推奨されています。
2種類のエンゲージメント
エンゲージメントには、ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントの2つの側面があります。これらは、従業員の仕事に対する意識や行動に密接に関連しています。
ワークエンゲージメントは、個人が仕事に対して感じるやりがいや誇り、熱意に焦点を当てています。具体的には、プロジェクトの成功や上司からの感謝の言葉などが、ワークエンゲージメントを高める要因となります。
一方で、従業員エンゲージメントは、所属組織に対する貢献意欲を示し、組織との関係性に着目しています。従業員が組織の目標に共感し、自身の仕事が組織の成功に寄与していると感じる場合、従業員エンゲージメントが高まります。
両者のバランスを保つことは、個人と組織の双方にとって重要です。
エンゲージメント向上による効果
エンゲージメントの高い職場では、従業員が自発的にイノベーションを起こし、チームワークを強化し、職場全体の士気を高めます。そして企業は競争力を維持し、市場での優位性を保つことができます。
また、エンゲージメントが高い従業員は、仕事に対する満足感が高く、離職率も低く抑えられるため、長期的な人材確保が可能です。
このように、エンゲージメントを向上させることは、組織の信頼性を高め、従業員のパフォーマンスを最大化し、持続的な成功をもたらす重要な要素となります。
働きがいのある職場を作るメリット
働きがいのある職場を作ることは、従業員と企業の双方に多くのメリットをもたらします。具体的には、従業員の働く意欲が高まり、会社の業績が向上。結果として離職率の低下が期待できます。
従業員の意欲が高まる
働きがいのある職場は、従業員の働く意欲を高め、仕事に対する満足度を向上させます。そして、働きがいを感じる従業員は、仕事に対する熱意と前向きな姿勢を持ち続け、結果的に仕事の効率が向上します。
例えば、定期的な評価やフィードバックを受けることで、従業員は自分の仕事が評価されていると感じ、モチベーションが向上します。結果的に、仕事に対する責任感が強まり、積極的に業務に取り組むようになります。
会社の業績が上がる
働きがいを感じる従業員は、業務に対する責任感が強く、業績を上げるための努力を惜しみません。エンゲージメントが高い従業員が積極的にアイデアを出し、新しいビジネスチャンスを創出することで、企業の成長を促進することができます。
このような職場環境では、イノベーションが生まれやすく、業績向上に直結します。
離職率が下がる
働きがいのある職場を提供することで、離職率が低下し、優れた人材を長期的に維持することが可能です。働きがいを感じる従業員は、仕事に満足し、会社への忠誠心が高まるため、離職願望が減少します。
具体的には、定期的なキャリアパスの見直しや、柔軟な労働環境の提供を行うことで、従業員は自身の成長を実感し、企業に対する忠誠心を強めることができます。結果として、離職率が低下し、企業の持続的な成長が期待されます。
働きがいを作る要素
働きがいを感じるためには、会社への信頼、仕事への誇り、そして仲間との連帯感などが重要な要素です。従業員が働きがいを感じ、組織全体のパフォーマンスが向上する要素を紹介します。
会社への信頼
会社への信頼は、働きがいを感じるための基盤です。従業員が会社に対して信頼を持てることで、安心して仕事に集中することができます。
信頼できる会社は、ビジョンに一貫性があり、経営陣と円滑なコミュニケーションが取れることが求められます。また、公正な採用や報酬、昇進の評価が行われ、従業員の意思や生活が尊重されていることが重要です。さらに、従業員に対する感謝の意を表明することで、信頼関係が築かれます。
仕事への誇り
仕事に誇りを持てると、自分が社会に貢献しているという実感が得られ、日々の業務に対するモチベーションが高まります。このような感覚は、仕事を単なる「労働」ではなく「使命」として捉えることを可能にします。
医療従事者が患者の命を救うことで得られる達成感や、教師が生徒の成長を見守ることで感じるやりがいは、仕事に対する誇りの典型的な例です。このような仕事に対する誇りがあると、従業員はより積極的に仕事に取り組むようになります。
仲間との連帯感
仲間との連帯感は、働きがいを高める要素の一つです。同じ目標に向かってチームで努力することで、強い連帯感が生まれます。
ただの「仲良し」ではなく、組織の中で共通の目標に向かって協力し合うことで、連帯感が深まります。この連帯感は、従業員に「自分は一人ではない」という安心感を与え、モチベーションを高める要因となります。
例えば、プロジェクトチームが困難な課題を協力して乗り越える際に生まれる一体感や、日常的なコミュニケーションを通じて築かれる信頼関係は、仲間との連帯感を強めます。
働きがいのある会社の特徴
働きがいのある会社は、安心して働ける環境や成長できる機会、公平な評価と報酬体制、そして仕事の意義や重要性を従業員に伝える仕組みが整っています。このような会社は、従業員にとって魅力的な職場であり、長期的な成功を支える基盤となります。
安心して働ける環境が整っている
働きがいのある会社は、従業員が安心して働ける環境を提供することが重要です。適切なワークライフバランスや、充実した福利厚生が整っていることが求められます。
有給休暇の取得が推奨される職場や、育児休暇が取りやすい環境では、従業員は家族との時間を大切にしながら仕事に取り組むことができます。
安心して働ける環境は、従業員のストレスを軽減し、長期的に健康で活力ある働き方を可能にします。また、従業員がライフスタイルに合った働き方を選択できることも、安心感をもたらします。
成長できる環境が整っている
働きがいのある会社は、従業員が成長できる環境を提供します。研修制度や資格取得の支援など、スキルアップの機会があることが重要です。
リスキリングプログラムを導入し、従業員が新しいスキルを習得する機会を提供するのも一つの例です。会社の制度を通じて、従業員は新たなチャレンジを恐れず、自分の可能性を広げることができます。
成長の機会が提供されることで、従業員は自分のキャリアに対する自信を持ち、長期的な目標に向かって努力する意欲が高まります。
公平な評価と報酬体制がある
従業員が努力の結果を正当に評価されることで、働きがいが高まります。
評価が公正で透明性がある場合、従業員は自分の努力が報われると感じ、さらに頑張ろうという意欲が湧きます。逆に、不透明で一貫性のない評価制度は、モチベーションの低下を招く可能性があります。
例えば、成果に基づくボーナス制度や、定期的な評価面談を行うことで、従業員は自分の成長を実感しやすくなります。
公平な評価と報酬体制を整えることが、従業員の働きがいを高め、企業全体のパフォーマンスを向上させる鍵となります。
仕事の意義や重要性が個々に伝わっている
従業員が自分の仕事が組織全体や社会にどのように貢献しているかを理解することで、仕事に対する意義を感じるようになります。この自己効力感が、従業員の働きがいを支える大きな要素となります。具体的な目標や業務の意義が明確であるほど、従業員は自信を持って仕事に取り組むことができ、結果として高いパフォーマンスを発揮します。
厚生労働省が実施した「職場の働きやすさ・働きがいに関するアンケート調査」では、従業員が与えられた仕事の意義や重要性について説明を受けた場合、「働きがいがある」と感じる割合が76.3%に達しました。これは、説明がない場合と比べて約26%も高い結果となっています。このように、仕事の意義をしっかりと伝えることが、従業員の働きがいを大きく左右することがわかります。
参照元:厚生労働省職業安定局「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」
働きがいを高めるための施策
働きがいを高めるためには、経営理念の共有、コミュニケーションの活性化、適正な評価制度の設置などが大切です。仕事に対する誇りと充実感を感じ、組織全体のパフォーマンスが向上するための施策をいくつか紹介します。
経営理念を共有
経営理念を従業員と共有することで、働きがいを高めることが可能です。従業員が経営理念に共感することで、仕事に対するモチベーションが向上します。
経営理念は、企業の方向性や価値観を示すものであり、従業員にとっても指針となります。経営理念に共感することで、従業員は「経営の一端を担っている」という意識を持ち、仕事に対する責任感が強まります。これにより、働きがいが向上し、企業全体の目標達成に向けた一体感が生まれます。
採用時であれば、経営理念を従業員としっかりとすり合わせることで、入社後の認識の違いを防ぎ、早期退職のリスクを低下させることができます。また、定期的に経営理念を振り返ることで、従業員のモチベーションを維持しやすくなります。
コミュニケーションの活性化
組織内での円滑なコミュニケーションは、従業員同士や上司との信頼関係を深めます。自分の意見を発信できる環境が整うことで、従業員は組織に対する安心感を持ち、働きがいが向上します。
定期的なミーティングやワークショップを通じて、従業員同士のコミュニケーションを促進することが有効です。また、社内SNSや意見箱を活用して、従業員が自由に意見を交換できる環境を整えることも、働きがいの向上につながります。
適正な評価制度を設置
評価制度が透明で公正であれば、従業員は自分の努力が報われると感じ、仕事への意欲が高まります。逆に、不透明な評価制度は、従業員のモチベーション低下や不満を招く可能性があります。
例えば、成果に基づく報酬制度や、明確な評価基準を持った昇進制度を導入することで、従業員は自己成長を実感しやすくなります。また、定期的なフィードバックを行うことで、従業員は自分の強みや改善点を理解し、次の目標に向かって努力を続けることができます。
福利厚生や労働環境の整備
福利厚生や労働環境は、従業員の生活や健康に直接影響を与える要素です。これらが適切に整備されていることで、従業員はストレスを感じることなく、仕事に集中することができます。また、衛生的で快適な職場環境は、従業員の健康を守り、長期的な働きやすさを提供します。
充実した健康保険や有給休暇制度、リモートワークの導入など、従業員のライフスタイルに合わせた福利厚生を提供することが有効です。また、職場の清掃や設備の改善など、衛生面への配慮も忘れずに行いましょう。
目標設定できる環境の整備
従業員が自分で目標を設定し、それを達成する経験を積むことで、自信とやりがいが生まれます。また、目標達成が評価に反映されることで、従業員のモチベーションはさらに高まります。
一例として、目標管理制度(MBO)を導入し、従業員が具体的な目標を設定し、その達成度に応じて評価が行われる仕組みを整えることが有効です。また、スキルアップやキャリアアップを支援するプログラムを提供することで、自己開発目標の達成をサポートします。
働きがいのある職場づくりの事例!エンゲージメント向上による効果
働きがいのある職場を作るためには、エンゲージメント向上に向けた具体的な施策が重要です。ここでは、エンゲージメント向上による効果を実感した企業の事例を紹介します。
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、2000~2003年の上場直後に急速な組織拡大を経験しましたが、その一方で離職率が30%を超えるという深刻な課題に直面しました。この問題に対し、同社は従来の実力主義・成果主義から「社員を大切にし、中長期的に人材を育成する」という方針へと大きく転換しました。その結果、会社全体の風通しが劇的に改善され、離職率は2022年時点で8.4%にまで大幅に低下しました。
同社は、社員一人ひとりの思いやりや各部署の状況を細かく把握するため、毎月3問のアンケートを実施しています。寄せられたコメントにはすべて人事部門が丁寧に返信し、社員が「打てば響く」と感じられるような環境づくりに努めています。また、アンケート結果をもとに、必要に応じて声掛けや人事異動など柔軟な対応を行い、社員のニーズに即したサポートを提供しています。
さらに、サイバーエージェントでは、人材育成や社員のやる気を最大限に引き出すため、若手社員への「抜てき」を積極的に行っています。責任あるポジションを任せることで、社員の成長を促し、自己実現を支援しています。また、毎年開催される全社表彰では、優れた成果を上げた社員を盛大に称え、その栄誉がさらなるモチベーション向上につながっています。この表彰制度は、全社員に目指すべき姿を示し、組織全体の士気を高める重要な機会となっています。
参照元:株式会社サイバーエージェント
株式会社福井
創業110年を超える老舗企業である株式会社福井は、長年にわたり離職者が減らず、採用を行っても社員数が増加しないという課題に直面していました。この深刻な状況を改善するため、社長自らが積極的に動き、エンゲージメント調査や社員との定期面談を導入しました。
同社では、調査で得られた社員の意見を基に、設備投資や人事制度の見直し・運用変更を行い、経営陣がそのフィードバックに必ず対応する体制を整えています。こうした迅速な対応により、社員との信頼関係が築かれ、企業と社員の間のコミュニケーションが大幅に改善されました。
また、同社では、社員と管理職が定期的に1on1面談を実施し、「デスクでできない話をする」「社員のための時間」「腹を割って話す」という三つの大原則を掲げています。この1on1面談を通じて、管理職と社員の相互理解が深まり、社員は自分の意見や考えをより自由に表現できるようになりました。その結果、社員の主体性が高まり、組織全体の活力が向上しつつあります。
参照元:株式会社福井
まとめ
働きがいを高めることは、従業員のモチベーションや企業のパフォーマンスを向上させるために重要です。さまざまな施策を通じて、従業員が仕事に誇りを持ち、組織に対する信頼感を深めることができます。実際に成功した企業の事例からも分かるように、これらの施策は企業の持続的な成長に不可欠です。
まずは、現在の職場環境や従業員のエンゲージメント状況を見直し、改善が必要なポイントを特定しましょう。その上で、経営理念の再確認やコミュニケーションの強化など、できることから取り組みを始めることが大切です。
小さな改善が大きな成果を生みます。 今すぐ、働きがいのある職場づくりに向けて、第一歩を踏み出しましょう。
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