近年、従業員の離職率が企業にとって大きな課題となっています。従業員が職場を去る理由はさまざまですが、その背景を正しく理解し、効果的な離職対策を講じることが、企業の成長には不可欠です。
そこでこの記事では、従業員が離職する理由や離職対策をしない場合のデメリット、さらに具体的な対策を7つご紹介します。優秀な人材を確保し、離職率を改善するためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
従業員が離職する理由
令和5年の厚労省の調査によると、就職後3年以内の新卒の離職率は高卒で37.0%、大卒で32.3%という結果が示されました。つまり約1/3の人が辞めているのです。
離職理由はさまざまですが、会社に建前で伝える退職理由と本音に乖離が見られる場合も多々あります。そこで、よくある退職理由を以下で紹介します。
出典:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します
待遇に対する不満がある
給与や昇給のペース、福利厚生など、待遇に対する不満は離職理由としてよく挙げられ、特に給与の低さは大きな要因といわれています。
従業員は自分のスキルや貢献度に対して適正な報酬が得られていないと感じると、モチベーションが低下し、ほかの企業でより良い待遇を求めるものです。特に、競合他社が魅力的なオファーを提示していれば、離職のリスクは高まるでしょう。そのため、待遇の見直しを怠ると、優秀な人材が次々に流出する可能性があります。
ワークライフバランスが保てない
長時間労働によりプライベートの時間が確保できない従業員は、次第に仕事に対する意欲を失っていきます。例えば、残業が多い、休日でも出勤や何らかの対応を迫られるといった職場もあるでしょう。このようなワークライフバランスが取れない環境では、家庭や個人の時間を犠牲にし続けることになり、結果として心身に不調をきたすケースも少なくありません。企業が柔軟な働き方を提供しない場合、従業員はより自分の生活スタイルに合った職場を探し始めるでしょう。
人間関係に問題がある
職場の人間関係は、従業員が働き続けるかどうかを左右する重要な要素です。上司や同僚との関係が良くない場合、仕事に対するストレスが増大し、働く環境が居心地の悪いものとなります。
なかでも、パワハラやいやがらせをはじめ、コミュニケーション不足で業務上の連携がとれないなどの事態が生じていると、従業員は精神的な疲労を感じ、離職を選ぶ傾向が強まります。
キャリアパスが不透明である
従業員は、自分の成長やキャリアの未来が明確でない場合、将来への不安を抱きやすくなります。仕事にやりがいがない、この職場で仕事を続けてもキャリアアップできないなどと感じると、転職を考える場合が多いでしょう。
特に、若手や中堅社員にとってキャリアパスの透明性は非常に重要であるため、自社でキャリアがどのように開発できるか明確に示すことが必要です。
離職対策をしないデメリット
企業が離職対策をしない場合、想像以上に多くのリスクやコストが発生します。特に、従業員の定着率が低い状態が続くと、企業全体のパフォーマンスや成長にも大きな影響を及ぼしかねません。ここからは、離職対策を怠るデメリットについて解説します。
採用コストが増加する
従業員が離職すると、その穴を埋めるために新たな人材を採用する必要があります。しかし、採用活動には多大なコストがかかるものです。求人広告の掲載費や採用担当者の時間、面接の準備や研修にかかるコストなどが積み重なると、企業の負担は大きくなります。
また、新しい従業員が業務に慣れるまでの間、生産性が低下することも考慮しなければなりません。頻繁に人材を採用する必要がある状況が続くと、企業にとって大きな負担となるでしょう。
ノウハウが流出する
長年にわたって社内で蓄積されたノウハウやスキルは、企業にとって貴重な資産です。しかし、従業員が離職することで、そのノウハウや経験が外部に流出してしまうリスクが高まります。属人性が高い場合は特に困る事態となるでしょう。
なかでも、専門性の高い業務や、プロジェクトに深く関与している従業員が辞めた場合、その影響は大きく、企業全体の競争力に悪影響を及ぼしかねません。さらに、退職した従業員が競合他社に移るケースもあり、直接的なビジネスへの損害となる可能性もあります。
残った社員の負担が増える
従業員が辞めた場合、その業務を引き継ぐ必要があるため、残った社員の負担が増加します。これにより、チーム全体のモチベーションが低下し、結果的に業務効率の悪化も懸念されます。特に人員の補充もない場合、業務量の増加だけでなく質が低下する可能性も否定できません。
さらに、残された社員がストレスを抱え、連鎖的に離職が続く負のスパイラルに陥る可能性もあります。残った社員の負担が増えると、職場全体の雰囲気が悪化し、企業としての生産性が低下するリスクもあるでしょう。
企業のイメージが低下する
離職率が高い企業は、外部からの評価が下がるリスクがあります。就職活動や転職活動やする際に、離職率の高さを参考にする方は少なくありません。
従業員の定着率が低い企業は、「働きにくい職場」「従業員を大切にしない会社」「ブラック企業」といったイメージを持たれやすくなります。こうしたネガティブな印象は、企業の評判やブランドに悪影響を与える恐れがあります。
離職を考えている従業員の特徴
従業員が離職を検討し始める際には、行動や態度になんらかのサインが現れる場合があります。これらのサインを早期にキャッチすることで、企業は従業員の離職を防ぐための対策を講じられるかもしれません。ここからは、離職を考えている従業員に見られる特徴について解説します。
業務に対する関心が低下する
離職を考え始めた従業員は、これまで取り組んでいた業務に対して関心が薄れる傾向があります。例えば、業務に対するモチベーションが低下し、ミスが増える、受動的な姿勢になる、会議やプロジェクトでの発言が減るといった様子が挙げられます。また、新しい業務に関わらなくなる場合もあるかもしれません。
このように業務への関心の低下は、離職を検討しているサインである可能性が高いでしょう。
休暇や欠勤が増える
急に休暇や欠勤が増えるのも、離職を考えている従業員によく見られる兆候です。特に、無断欠勤や理由のはっきりしない休暇が増える場合、仕事に対する不満が蓄積しているかもしれません。また、休みをとって転職活動をしている可能性もあります。
もちろん、従業員が定期的に休みを取ること自体は問題ありません。しかし、急な欠勤が続くと離職を検討している可能性も視野に入れた方が良いでしょう。
社内の人との付き合いが減る
職場での人間関係が疎遠になるのも、離職を考えている従業員の特徴です。
これまで同僚とのランチやミーティング後の雑談に積極的だった社員が、突然距離を置くようになる場合、社内の環境に対する不満を感じているのかもしれません。
また、そのうち辞めるから、と社内の人間とあまり関わらなくなっている可能性もあるでしょう。
離職対策のアイデア7選〜事例を交えて〜
ここからは、離職を防止するためにできるアイデアを、事例を交えながら紹介します。自社に必要なものを取り入れて離職率を改善させましょう。
柔軟な働き方の導入
柔軟な働き方の推進は、離職防止に効果的です。特に、リモートワークやフレックスタイム制の導入によって、従業員が自分のライフスタイルに合わせて働ける環境を提供する企業が増えています。
事例として、原則全員フルリモートとしている企業もあります。あえて全員をフルリモートにすることで、疎外感や有利不利をなくし、また家庭の事情があっても働きやすい職場環境を提供しているのです。
このように柔軟な働き方は、従業員のワークライフバランスを保つための有効な手段といえます。
出典:スローガン株式会社|社員全員がフルリモートで働き続ける理由
長時間労働の是正
長時間労働は従業員の疲労を蓄積させ、モチベーションを低下させるため、離職につながりかねません。
そのため、残業を減らす施策を講じている企業も増えています。例えば、ノー残業デーや残業の事前申請制度の導入などが挙げられます。長時間労働をなくして従業員の健康を守り、離職を防ぎましょう。
残業削減施策については、こちらの記事で解説しています。
コミュニケーションの活性化
社内のコミュニケーションが活性化されると、従業員同士の信頼関係が深まり、離職を防ぎやすくなります。対策としては、定期的な1on1ミーティングやチームビルディングイベントの導入などがあるでしょう。
事例として、面接した採用担当者が入社した社員を訪問しフォローしている企業もあります。
従業員が自分の考えや悩みを相談しやすい風土が醸成されれば、人間関係や業務への不満が解消され、離職率も低下するでしょう。
キャリアパスの明確化
従業員が自分の将来を見すえられる環境を提供できるか否かは、長期的な勤務を促す鍵となります。キャリアパスが不透明だと、従業員は成長の機会を求めて転職を考えるようになるでしょう。
対策としては、従業員のキャリアの展望を明確にして、昇進やスキルアップの機会を提供する、教育や研修制度を充実させるといった施策が一例としてあります。
スキルアップを通して「この会社にいたら成長できる」と感じてもらいましょう。
評価制度の見直し
従業員の頑張りが正当に評価されていないと感じると、離職を考えるきっかけとなります。そのため、評価制度を見直し、公平で透明性のある評価基準を設けることが必要です。
事例として、成果よりもプロセスを評価する制度を取り入れた企業は、入社後3年の離職率ゼロを実現しています。
評価制度の整備によって、頑張れば評価されると従業員に感じてもらいましょう。
退職理由のヒアリング
離職を防ぐためには、従業員がなぜ退職を考えているのか、その理由を把握しなければ対策もできません。そのため、退職する従業員にヒアリングして自社の問題点を明らかにしている企業もあります。
ただし、退職前にヒアリングしても慰留目的だと思われ、建前だけ述べられて終わる可能性があります。そのためヒアリングするなら、退職の手続きが終わってから面談する、無理な引き留めをしないように留意しましょう。
離職防止ツールの導入
近年、離職防止のためのツールやシステムを活用する企業が増えています。
従業員のエンゲージメントを測定し、離職リスクを早期に検知できるツールを導入することで、個々の従業員に対する適切なフォローアップが可能になるでしょう。離職率改善を目指して取り組みをしていても効果が得られていない場合は、ツールの導入を検討してはいかがでしょうか。
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まとめ|離職対策を講じて離職率を改善させよう
離職対策は、企業が長期的に成長するために欠かせない取り組みです。柔軟な働き方やキャリアパスの明確化、コミュニケーションの活性化など、従業員の満足度を向上させる施策を導入することで、離職率は改善されるでしょう。
また、評価制度や労働環境の見直しをすることも大切です。従業員が安心して働ける職場を作り、企業としての魅力を高め、優秀な人材の定着と企業の成長を実現しましょう。
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