人時生産性は、業績向上を目指す上で欠かせない重要な指標です。しかし、人時生産性を上げるために何をすれば良いかお困りの方も多いでしょう。
そこでこの記事では、人時生産性を低下させる要因や分析方法、向上施策を紹介します。人時生産性の向上を目指す経営者や管理職の方は、ぜひ参考にしてください。
人時生産性を低下させる要因
従業員1人が1時間あたりにどれだけの付加価値を生み出しているかを示す「人時生産性」は、経営の効率性を図る重要な指標です。
しかし、企業の成長のために人時生産性を上げたいものの、思うように上がらないことも多いでしょう。人時生産性が低下する要因は複数あるため、まずはどの要因が影響しているのかを把握する必要があります。以下で、人時生産性を低下させる5つの要因について解説します。
生産ロス
生産ロスとは、業務が計画通りに進まずに無駄が生じる状態を指します。主に製造現場で生じるケースが多く、以下のような例が挙げられます。
- 機材の故障で業務が中断する
- 運搬する時間が長くかかる
- 必要な材料が揃わない
- 不具合により修正が必要となる
このようなトラブルが発生すると、作業が遅れ、生産効率が下がります。このようなロスを減らすためには、材料の在庫管理や機材の定期的なメンテナンスが不可欠です。
動作ロス
従業員が業務を行う際に、不要な動作や移動が多いと動作ロスが発生します。例えば以下のような例が挙げられます。
- 作業現場の導線やレイアウトが悪くて無駄な動きが生じる
- 教育が不十分であるために動きに無駄が多い
このように物理的要因や教育的な要因によって従業員が無駄な移動を繰り返すことで、人時生産性が低下します。このようなロスを防ぐには、業務の動線を見直して効率的な作業環境を整える、無駄な動きがなくなるよう研修を行うことが大切です。
手動によるロス
手作業が多く、時間を要する業務が残っていると、手動によるロスが発生します。自動化できるにもかかわらず手動であるがゆえに生じるロスです。例えば、以下のような例が挙げられます。
- 手作業による注文処理
- 会計業務における手動での計算
- 人の手による生産工程
ロボットに任せられるような作業を人の手でしていると、人時生産性が低下します。手作業による業務はエラーのリスクも高いため、ミスの修正にかかる時間も増えるものです。自動化できるものは機械やロボットに任せて、人でなければできない作業に手を使いましょう。
管理ロス
管理業務に時間が取られすぎる場合、管理ロスが発生します。例えば、以下のような管理業務が対象になります。
- 従業員のシフト管理
- 業務スケジュールの調整
- 在庫管理
管理業務は思いのほか時間がかかるものです。そのため、十分に計画を立てないと、突発的にトラブルが生じた際に対応が困難となる、時間がかかるといった事態になりかねません。適切なシステムを導入して、管理業務の効率化を進めると良いでしょう。
編成ロス
人員配置が適切でない場合、編成ロスが発生します。例えば以下のような例が挙げられます。
- 忙しい時間帯に従業員が不足している
- 閑散期に過剰な人員が配置されている
- 人員は足りていても連携がとれていない
このように状態では作業の流れが悪くなる、工程によっては待ちが生じるなどの問題が生じかねません。柔軟な人員配置や円滑な連携を進めてロスをなくしましょう。
人時生産性を上げる分析方法
人時生産性を向上させるためには、まず現状を正確に把握し、問題点を見つけることが不可欠です。人時生産性を算出したら、必要に応じて複数の視点で比較分析すると良いでしょう。ここからは、業種別や部署間での比較分析について説明します。
人時生産性の計算式についてはこちらで解説しています。
業種で比較分析する
同業他社のような業界の中での比較分析は、人時生産性を向上させる基本的なアプローチの1つです。
同じ業界内での他店舗や競合との比較をすることで、自店舗や自社の人時生産性が業界平均に対してどのような位置にあるのかを把握できます。
例えば、ほかの製造業の企業と比べて人時生産性が低い場合、どの部分で無駄が発生しているのかを特定すれば、改善策を立てられるでしょう。また、業種内で比較することで、自社の位置付けを把握するのに役立ちます。
部署間で比較分析する
もう1つは、部署間での比較です。自社の部署ごとに人時生産性のデータを算出しましょう。
業種別平均との比較も踏まえつつ、部署間であまりに低い状態であれば対策を講じる必要があります。小売業で例を挙げるなら、スーパーの精肉部門・製菓部門・惣菜部門など、同じ会社の中でも数値に差が出る可能性があります。
数値を比較することで、自社のどこに改善の余地があるか把握できるでしょう。
人時生産性を上げるには?〜向上させるためのアイデア〜
人時生産性を向上させるには、その計算式が示すように「粗利益を上げる」「原価や経費を減らす」「人員や労働時間を減らす」のいずれかが必要です。そのためには業務効率化も不可欠でしょう。しかし、具体的にどんな施策を講じれば良いのか悩むものです。そこで、ここからは人時生産性を上げる施策を7つ紹介します。
ITツールや自動化の導入
業務の一部をITツールで自動化すれば、手作業による業務の時間を削減でき、生産性を大幅に向上させられます。
例えば、注文管理システムや在庫管理システム、プロジェクト管理ツール、チャットツールなどを導入するのも良いでしょう。データ入力や報告書作成など、定型的な業務の自動化も進めたいものです。手作業を減らして業務効率化を推進しましょう。
フレックスタイム制やリモートワークの活用
フレックスタイム制を導入すると、従業員が最も生産性の高い時間帯に働けます。また、リモートワークの導入によって、通勤時間を削減して仕事に費やす時間を増やせるでしょう。
例えば、飲食業界では一般的ではありませんが、一部のバックオフィス業務ではフレックスタイム制やリモートワークも活用できるかもしれません。
従業員が自分のペースで働ける環境を整えると、業務効率が向上し、結果として人時生産性の向上にもつながるでしょう。
業務のアウトソーシング
業務の一部を外部に委託するアウトソーシングは、特定の業務にかかる時間やコストを削減できる有効な手段です。
専門的なスキルが不要な業務や日常的なルーチン業務(ノンコア業務)、例えば、清掃やITサポートなどをアウトソーシングすれば、従業員はコア業務に集中でき、全体の生産性を高められます。
適切な外注化で社内リソースを重要な業務に集中させましょう。
教育や研修の充実
従業員のスキル向上は、生産性に大きく影響します。効率的な業務遂行のためには、スキルアップや研修の機会の提供が必要です。
例えば、業務効率化のためのツールの使い方や、最新の業務手法に関するトレーニングを定期的に実施することで、従業員が生産性を上げるためのスキルを身につけられ、結果として生産ロスも減らせるでしょう。
人員配置の最適化
人員配置が不適切であると、従業員が効率よく働けず、無駄な時間が発生します。例えば、混雑する時間帯に適切な人数を配置して閑散期には人員を削減するなど、時間帯に応じた柔軟なシフト管理が求められます。
さらに、従業員のスキルや経験に応じた役割分担をすることで、全体の業務がスムーズに進み、結果的に人時生産性が向上します。従業員の得意分野や適性を把握して、最大のパフォーマンスを発揮できるように配置を考えましょう。
業務の優先順位づけとタスク整理
多岐に渡る業務の中で、すべてのタスクを効率的にこなすためには、優先順位を明確にして無駄な業務を整理する必要があります。
例えば、定期的にタスクを見直す、重要度の低いものや無駄な業務は削除するなど、従業員の時間を効率的に使うことが大切です。
プロジェクト管理ツールや定期的なミーティングなどを通して優先順位づけをすると、動作ロスも減らせるでしょう。
モチベーション向上のための施策
従業員のモチベーションが高ければ、生産性は自然に向上します。そのため、従業員の意欲を引き出す目的で、報酬やインセンティブ制度を導入するのも良いでしょう。
そのほか、表彰制度や柔軟な働き方の導入なども良いかもしれません。上手く活用して、チーム全体の士気を上げましょう。
人時生産性を上げる際に注意したい事
人時生産性を上げる施策を検討する際に、注意すべきことが2つあります。
1つ目は、粗利益額を上げたいばかりに人件費を安易に削減することはいけません。人件費を削ってしまうと人的リソースが減って生産性が低下するだけでなく、属人化している業務が滞る、モチベーションが低下するなどのデメリットが起こりえます。
2つ目に、業務量が変わらないのに労働時間だけを短くしすぎることもいけません。有効な策なしに、膨大な業務を今より短い時間でこなすよう指示されても、業務の質が低下するだけで本末転倒です。
人時生産性を上げたいがために、目先の人件費や労働時間だけを削っても根本的な解決にはなりません。ロスが生じている原因を探ったうえで人時生産性を上げる施策を練りましょう。
まとめ|人時生産性を上げるには分析をして向上施策を講じよう
人時生産性を向上させるためには、現状の問題点を正確に分析し、適切な施策を講じることが不可欠です。生産ロスや動作ロス、管理ロスなど具体的な要因を特定して、改善策を取り入れれば、効率化を図れるでしょう。また、業種や部署ごとの比較分析をし、自社や部門の立ち位置を把握するのも重要です。
人時生産性を上げる施策としては、業務効率化や働きやすい環境づくり、適切な外注化、教育の充実などさまざまあります。自社に必要な施策を講じて人時生産性、ひいては業績を改善させましょう。
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