現状の業務に無駄や非効率さを感じながらも、どこから改善すればよいかわからない…。そんな悩みを抱えていませんか?
業務フローの見直しは、業務効率を高めるだけでなく、チーム全体の生産性向上や働きやすい環境作りにも直結します。しかし、改善を進めるにはポイントを押さえることが重要です。
本記事では、業務フロー改善のメリットや進め方、成功事例を踏まえて、すぐに実践できる具体的なステップをわかりやすく解説します。少ない労力で大きな成果を上げる方法を知り、今すぐ業務フロー改善に取り組んでみませんか?
業務フロー改善が業務改善につながる!
業務の流れや手順を効率的に見直すことは、企業全体のパフォーマンス向上に直結します。業務フローの改善は、組織全体の作業効率を上げ、生産性を高める重要なステップです。
ここでは、業務フローとは何か、その重要性と業務プロセスとの関係性を解説していきます。
業務フローとは?
企業活動は業務フローと業務プロセスで形成されています。人が情報を扱うのが「業務」です。その情報に基づいて何らかのアウトプットを行い、その一つ一つの業務が前工程から後工程にリレーされる流れを「業務フロー」と呼びます。
業務フローをひとつのまとまりとして捉えると、それらが連なった複数の業務フローで行われる企業活動を「業務プロセス」と定義することができます。つまり、業務フローは個々の作業の流れであり、それらが集まって大きな業務プロセスを形作っているのです。
業務フローと業務プロセスの違いと関係性
業務フローと業務プロセスは、企業活動において密接に関係しています。例えば、製造業務を1つの業務プロセスとして捉えると、設計、調達、生産、検査、出荷という複数の業務フローが順番に行われることで、最終的に製品が完成します。
設計業務に注目すると、製品仕様の決定、設計図の作成、設計レビューという個別の業務に分けられ、これらが連携して製品の設計が進むわけです。このように業務プロセスと業務フローの関係を理解することで、どの段階で業務の改善や効率化が可能なのかを明確にすることができます。
業務フロー改善を行う3つのメリット
業務フローの改善は、業務全体の効率化を図るだけでなく、組織の健全な運営や従業員の働き方にもポジティブな影響を与えます。ここでは、業務フロー改善がもたらす3つの主なメリットについて解説します。
1.業務効率化・生産性向上
無駄な業務や非効率な業務フローを排除することで、作業時間の短縮と1人当たりの生産性を大幅に向上させることが可能です。生産性の向上は、市場競争が激化する現代において大きな強みとなり得ます。
特に多くの業界で人手不足が問題視されている昨今では、限られたリソースで最大限の成果を出すことが不可欠です。
さらに、生産性の向上は、従業員のパフォーマンス向上だけでなく、離職率の低下や求職者の増加にもつながり、人材管理の面でも大きなメリットをもたらします。
業務効率化の手法についてはこちらをご覧ください。
2.リスクマネジメント
業務が属人化している場合、業務フローが不透明になり、作業効率が低下するだけでなく、担当者が異動や退職した際に引き継ぎがうまくいかず、業務が停滞するリスクも高まります。しかし、業務フローを見直し、標準化やマニュアル化を行うことで、誰でも対応できるようにすることが可能です。
これにより、業務が属人化するリスクを抑え、安定した運営が実現します。特に中核業務においては、このプロセスの透明化とマニュアル化が重要です。
3.働き方改革・DX促進
業務フローの改善は、従業員一人ひとりの業務負担を軽減し、働き方改革の促進にもつながります。特に近年、労働環境の変化に伴い、残業時間の規制が強化されています。
2019年に施行された働き方改革関連法では、残業時間の上限が月45時間・年360時間に設定され、多くの企業が業務効率化の必要性を認識しています。さらに、テレワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方を実現するためにも、業務フローの見直しは欠かせない取り組みです。
参照元:「働き方改革関連法」の概要
また、業務プロセスの見直しはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にも大きな役割を果たします。政府や企業がDXを推進する中で、業務フロー改善がその基盤となることは間違いありません。
業務フロー改善で気をつけたい3つのポイント
業務フローの改善は、業務効率化や生産性向上に大きく寄与しますが、進め方には注意が必要です。ここでは、業務フロー改善を行う際に陥りやすい3つのポイントについて解説します。
- 作成に時間をかけすぎない
- 対象範囲を広げすぎない
- 理想を求めすぎない
これらを意識することで、無理なく改善を進めることができます。
1.作成に時間をかけすぎない
業務フロー改善の最初のステップは、現状の業務フローの把握と整理です。しかし、この段階で必要以上に正確さや細部にこだわりすぎると、改善プロジェクト自体が停滞してしまいます。
現状をざっくりと把握し、大枠を掴むことに集中することで、スタート地点での足踏みを防ぎ、素早く次のステップに進むことができます。
2.対象範囲を広げすぎない
業務フローを改善する際、ついあれもこれもと対象範囲を広げたくなりますが、注意が必要です。範囲が広がると、業務が複雑になり、計画が進みにくくなることがあります。
改善のポイントは、まず小さな範囲から始めてスピーディーにPDCAサイクルを回すことです。小さな成功を積み重ねることで、最終的に大きな成果を得ることができます。
3.理想を求めすぎない
理想的な業務フローを追求するあまり、過度に高い目標を設定してしまうことも改善が進まない原因となります。
改善プロセスでは、ある程度の妥協点を設け、段階的な改善を目指すことが重要です。小さな目標を達成しながら徐々に理想に近づくことで、実現可能な改善を積み重ねていくことができます。
【5STEP】業務フロー・業務プロセス改善の進め方
業務フロー改善は、段階的に計画的に進めることが成功の鍵です。ここでは、業務フローと業務プロセスの改善を5つのステップで進める方法を紹介します。
- 業務を図解して可視化
- 課題の整理と方針策定
- 実行計画策定
- 計画実行
- 結果の振り返り
各ステップを理解し、実践することで、効率的な業務改善が可能となります。
STEP1.業務を図解して可視化
まずは、現行の業務プロセスを図解し、可視化します。どのような業務が、どのような流れで進んでいるのかを見える化することで、問題点や非効率な部分が明確になります。
それぞれの業務フローについて、誰が何をしているのかを細分化して記録することが重要です。可視化する際は、以下のポイントに注意します。
- 業務の手順を書き出す
- 作業の内容を記録する
- 作業のパターンを特定する
また、関係者へのヒアリングも効果的です。できれば業務に直接関わらない第三者がヒアリングを行うと、より客観的な視点で業務の改善点が見つかりやすくなります。
STEP2.課題の整理と方針策定
業務を可視化したら、次は課題を整理し、改善の方針を策定します。業務フローと業務プロセスを区別し、非効率な業務やボトルネックを特定することで、的確な改善策を講じることができます。
課題を整理する際に有効なフレームワークが「ECRSの原則」です。ECRSとは以下のステップで課題解決を図る方法です。
- Eliminate(排除する): 不要な業務をなくす
- Combine(結合する): 似た業務をまとめる
- Rearrange(交換する): 作業順序を入れ替えて効率化する
- Simplify(簡素化する): 作業をシンプルにする
この原則に従って、業務を見直し、改善案を考えると効果的です。
STEP3.実行計画策定
次に、改善方針に基づいた具体的な実行計画を策定します。タスクを洗い出し、実行スケジュールを設定することが重要です。また、実施のための体制づくりもこの段階で整えます。
計画を策定する際には、それぞれの業務フローで「誰が・何のために行うのか」、「事前にどのような準備が必要か」を明確にすることがポイントです。業務フローは相互に影響し合うため、改善による他の業務への影響も考慮しながら計画を立てる必要があります。
STEP4.計画実行
実行計画を元に改善を実行します。この際、業務改善の効果を測るための体制を整えておくことが大切です。
評価シートや業務フロー可視化ツールを活用し、計画に対してのフィードバックを行う1on1ミーティングを設定することで、成果と課題を記録し、改善を進めることができます。
STEP5.結果の振り返り
改善を実行した後は、その結果を振り返り、PDCAサイクルを回しながら改善を繰り返します。
業務改善は1回で終わるものではなく、継続的に取り組む必要があります。改善されたように見える業務でも、隠れた無駄が残っている可能性があるため、振り返りを怠らず、継続的な改善を目指しましょう。
業務フロー改善を進めるための3つのコツ
業務フローの改善を成功させるためには、効果的なアプローチが必要です。ここでは、業務フロー改善を効率的に進めるための3つのコツを紹介します。
- 現状の把握と課題の洗い出しのための方法にこだわらない
- 小さな成功体験の共有を繰り返す
- 改善を横展開して少ない労力で成果を最大化する
これらのポイントを押さえて進めることで、少ない労力で大きな成果を上げることができます。
現状の把握と課題の洗い出しのための方法にこだわらない
課題を洗い出す際には、きれいなフローチャートを作成することが必ずしも最善ではありません。現状を正確に把握することは重要ですが、そのために時間をかけすぎると、改善が進まなくなる恐れがあります。
目的はフローチャート作成ではなく、課題を明確にすることです。箇条書きや付箋など、シンプルなツールを使ってスピーディーに進めることを意識しましょう。
小さな成功体験の共有を繰り返す
大規模な改善策よりも、すぐに実行できる小さな改善策から始めることが効果的です。例えば、100万円の効果を狙う施策よりも、10万円の効果でも短期間で実行可能な施策を選び、チームに成功体験を共有しましょう。
このような小さな成功体験を積み重ねることで、改善に対するモチベーションが高まり、次の施策に対する理解と協力が得やすくなります。結果として、改善サイクルが加速し、組織全体の効率化が進むでしょう。
改善を横展開して少ない労力で成果を最大化する
一つの業務フロー改善が成功したら、同じような業務が他の部署や業務プロセスに存在しないかを確認しましょう。見つかれば、そこで同じ施策を適用することで、少ない労力で成果を最大化することができます。
一つの部署で複数の成功を積み上げるよりも、一つの成功事例を複数の部署に展開する方が効率的で、大きな効果を得やすくなります。
業務フロー改善の企業事例
実際に業務フロー改善を行い、成果を上げた企業の事例を紹介します。これらの企業は、業務フロー改善を通じて効率化や生産性向上を実現し、業界内での競争力を高めています。具体的な取り組みとその結果を確認し、貴社でも活用できるヒントを得てください。
ファーストリテイリング(ユニクロ)
ファーストリテイリングは、ユニクロブランドにおいてRFIDタグ(無線周波数識別タグ)を導入し、製造から輸送、販売までの各工程における無駄を徹底的に排除しました。
RFIDタグを用いることで、在庫の追跡が容易になり、在庫管理や販売プロセスの効率化が図られました。この技術の導入により、ユニクロは業務フローを大幅に改善し、商品補充や在庫チェックなどの業務時間を大幅に削減することができました。
参照元:【更新】RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント | Locus Journal
三井住友生命
三井住友生命の事務センターでは、業務の属人化や業務継承に課題を抱えていました。そこで、大規模な業務可視化プロジェクトを実施し、「事務手順」「業務実績」「業務運営状況・改善活動」「相互支援」という4つの要素を中心に徹底的な可視化を行いました。
このプロジェクトの結果、業務の属人化が解消され、残業時間の削減や処理時間の短縮、業務ミスの減少といった大きな成果が得られました。
参照元:業務可視化サービス導入事例 三井生命保険株式会社様(現 大樹生命保険株式会社様) | オージス総研
GMOペパボ株式会社
GMOペパボ株式会社の経営管理部・総務グループでは、工数管理に時間がかかるという問題を抱えていました。
そこで、工数管理ツールを導入し、工数データの集計と可視化を自動化しました。この改善により、リアルタイムで業務状況を確認できるようになり、迅速な意思決定が可能になったほか、全体的な業務フローの効率化が実現しました。
参照元:業務改善のボトルネックをいち早く特定|GMOペパボが工数データの収集に「TimeCrowd」を活用 | TimeCrowd Blog
まとめ
業務フロー改善は、業務効率化、生産性向上、リスクマネジメント、そして働き方改革やDX推進に大きく貢献します。しかし、その進め方には注意が必要で、作成に時間をかけすぎず、範囲を広げすぎず、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
企業事例を参考にしながら、現状の業務フローを可視化し、課題を整理し、具体的な改善計画を立てることで、業務全体の効率化を図ることができます。
まずは現状の業務フローを図解し、すぐに実行できる小さな改善点から取り組んでみましょう。業務フローの改善は一度に全てを完璧にする必要はありません。まずは行動に移すことが大切です。
今すぐ、現状を見直し、最初の一歩を踏み出しましょう!
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